歩数や時間よりも姿勢や腕振りが大事

 健康のためには1日に何歩、歩くことがベストなのだろうか。

「健康寿命研究所などでは病気を防ぐ歩数の目安が研究されていますが、まずは何歩からでもいいんです。とにかく“こまめに歩く”、ただそれだけです。8000歩も歩けない……と尻込みしていたら本末転倒。

 コンビニに行くにしても、いつもは自転車や車を使っていた移動を歩いてみる。数分でもいい、それを積み重ねることです

 いつ歩けばいいのかもよく質問されるそうだが、それもいつでもいい、と先生。

「朝でも夕方でもどの時間帯でも好きに歩けばいいんです。ただこれからの気温の高い季節は日中のウォーキングはリスクが大きいので涼しい時間帯を選んだり、室内のランニングマシンを利用したりして、適度に水分を補給しながら熱中症に気をつけて行いましょう」

 歩く速度も速歩きではなく、ゆっくりでいいという。

「特にひざや腰に痛みがある場合、無理は禁物です。とはいえ長期的に見ると歩かないとかえって悪化するので、短い距離でいいのでソロソロとでも歩いてみましょう」

 ただひとつ意識することがある。“姿勢”だ。

歩行の質を上げるには姿勢がなによりも大事。上から糸で引っ張られているように背筋を伸ばして胸を張り、モデルさんのように歩くんです。家の中や、近くのコンビニに行くときなど、たとえ1分でもいいのでモデルさん歩きをしてみましょう

 ひじの引き方にも、ポイントが。

「ひじを軽く曲げてしっかり後ろに引きます。すると骨盤にひねりが加わり背筋や腹筋が鍛えられ、股関節の運動にもなります」

 ひじを振ることで推進力が生まれるため、歩行もスムーズになる。そのため、できれば手ぶらが望ましい。さらに頭を使いながら歩くと認知症予防効果もアップ。

国立長寿医療研究センターが行った調査で、頭の体操と運動を同時に行うと認知機能が改善することが証明されています。計算や、しりとり、川柳を作りながら歩く、あるいは誰かと会話を楽しみながら歩いてもいいと思います

 それでもなかなか実行できない人は……。

「買い物や銀行には行きますよね。その機会をチャンスだと思ってリュックサックを背負って腕を振って姿勢よく歩いてみましょう。

 そして少しずつ距離を延ばして習慣化していく。セロトニンがバンバン出て幸福感を感じるようになりますよ。歩くことは快楽、この喜びをぜひ体感してほしいです