「母親になって後悔してる」そんな刺激的なワードで自分の子育ての苦悩をSNSなどで発信する人が増えている。「後悔するほどに、何が母親たちを苦しめているのか」。リアルな声を聞きたくて独自取材を行った。
短期集中連載の3回目は発達障害の息子を育てるサチコさん(仮名=56)の話をお伝えする。
「はっきり言って、息子を産んだことを後悔したこともあります。子どもをかわいいと思えない自分は異常なんだと悩んでましたね」
許せなかった夫のひと言
おっとりとして優しい雰囲気のサチコさんは38歳のとき、ひとり息子のハルト君を産んだ。31歳で結婚してすぐ子どもは欲しいと思ったが、なかなか授からなかったのだ。長く働いた印刷会社を辞めてパート勤めをしているときに妊娠がわかり、専業主婦になった。
サチコさんがハルト君を育てづらいと感じ始めたのは、1歳半のころだ。
「ママー、ママー」
ハルト君はサチコさんが何をしていても、どこに行くときも後をついてきた。癇癪もひどく、玩具で遊んでいてもうまくできないと投げつける。テレビをガンガン叩く。飼い犬にギューッと強く抱きつき、犬が痛がってもやめない……。
「彼の癇癪が起きると、自分もワーッとなって制御できなくなってしまって、彼に手をあげちゃったり……。ワーッとなることは昔もありましたが、子育てを始めてから頻繁に出てくるようになってしまったんです」
料理を作っていても、しょっちゅう邪魔されるので進まない。仕方なく、家でライターの仕事をしている7歳上の夫に弁当を買ってきてもらった。最初は「いいよ」と応じていた夫も、途中から「今日もお弁当?」と文句を言うように。サチコさんが子育てのしんどさを夫に訴えると、こんな言葉が返ってきた。
「え、だって母親ならみんなやってることじゃない。何でできないの?」
夫は悪気なく発した言葉かもしれないが、サチコさんには衝撃のひと言だったという。
「できない自分が許せない。だから、夫に『そんなの無理だよ、できないよね』と言ってほしかったんだと思う。その言葉を待っていたんだと思う。それなのに、彼には理解してもらえないんだと、すっごいショックで、悔しくて、苦しくて……。
それまでは夫に満足というか、話し合えば理解してくれるし、いい関係だと思っていたんです。だけど、子育ての壁にぶち当たって苦しんでいるときの、そのひと言で、この人、こういう人だったんだって」
















