動脈硬化や脳梗塞のリスクも高まる
統計的には、脂肪肝と診断された人の70〜80%は現状維持だが、残り20〜30%が脂肪性肝炎に進むといわれている。
「進行するかどうかは現状では予測できず、解明も十分ではありません。治療薬もないため、現時点でできる対策は生活習慣の改善に尽きるのです」
悪化しても命に別条はないからと安心はできない。肝臓の働きを理解すれば、脂肪肝の怖さがさらに実感できると浅部先生。
「肝臓の最も重要な役割は“代謝”です。代謝とは、炭水化物やタンパク質、脂質といった三大栄養素を使いやすい形に分解したり、身体に必要な物質を合成したりすること。ご飯はブドウ糖に、肉はコレステロールや筋肉の材料に変換されるなど、生命活動を支える基盤を担っています。
もし代謝が滞れば、人間は生きていけません。さらに、肝臓には解毒作用もあります。アルコールを摂取すると、肝臓はそれを分解し、最終的に尿などに排泄(はいせつ)します。タンパク質を分解する過程で生じる有害なアンモニアも、尿素に変換して排出されるのです。
脂肪肝になることでこうした働きが衰え、毒素が体内にたまり、疲労感や倦怠感、さらには重篤な病気を引き起こします。肝臓病だけでなく、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞といった生活習慣病のリスクも高まります。実際、脂肪肝の患者さんは肝疾患そのものよりも心血管系の病気で亡くなるケースが少なくありません」
加えて、肝臓は胆汁を生成する働きも担っている。
「胆汁は食事の際に胆のうから分泌され、脂質を消化酵素と混ぜ合わせて消化・吸収を助けます。胆汁に含まれるビリルビンという成分は、便や尿の色を決める重要な成分でもあるんです」











