やはり、継続的に脳と身体に刺激を与えることが重要なようだ。デイケアだけでなく、山本さんが普段の生活で何げなく心がけてきたことのなかにも、認知症への進行を食い止めるヒントが。
好奇心を持ち続けることが大事
「妻をがんで亡くし、一人暮らしの期間も長くなりましたが、やはり急に寂しくなるときがあります。そういうときには、思いきって声を出して泣くんです。感情には逆らわないようにして、その場、そのときの気持ちを大事にしています」
また役者という職業柄、日常的に声を出しているのもメリットが大きいと担当医からお墨付きをもらっている。
「私は講演などで朗読を行っていますが、日常生活で実践するなら、新聞を声に出して読むのがいいと思います。これは、実際に役者のトレーニング法にあるんです。文章に込められた感情の変化もわかりますし、いろいろなニュースや情報ごとに違う文体や言い回しを『らしく』読み分けるのは簡単じゃなく、いいトレーニングになりますよ」
高齢者は、声が小さくなったり言語が不明瞭になったりするせいで、周囲とのコミュニケーションに悩む人も多い。人とのコミュニケーションや社会性の維持も認知症予防には重要なため、発声改善のために朗読や、カラオケもおすすめだという。
「あとは、好奇心を持ち続けることが大事だそうです。僕は演技のために常に人を観察してきたのがよかったのかもしれません」
終始、「こうしたらいいなんて、簡単には言えない」と話していた山本さんだが、最後にこれだけは伝えたいと力を込めてメッセージをくれた。
「おかしいなと思ったら、変に考えすぎず、とにかく早く病院に行くこと。精神科や認知症外来は、そりゃ誰だって行きにくいよ。だから、何かきっかけをつくって。こういう雑誌の記事もきっかけになればいいですね」
認知症への不安や恐怖を抱えつつも、前向きに毎日を過ごしている山本さん。その姿勢をぜひ参考にしたい。
取材・文/當間優子
やまもと・がく 俳優。テレビドラマや映画、舞台で幅広く活躍し、1978年の『白い巨塔』(フジテレビ系)で演じた内科医・里見脩二役は代表作のひとつ。近年は軽度認知障害(MCI)と診断され、「生老病死」をテーマとした講演を全国で行っている。主治医との対話を通して「老いを生ききる」ための知恵やヒントを伝える書籍『老いを生ききる 軽度認知障害になった僕がいま考えていること』(アスコム)も話題。


















