ふくさんと家族が守り続けてきたラーメンは、素朴で何度も食べたくなる一杯。麺類の他にも餃子や野菜炒め、麻婆豆腐などの定食も人気。運が良ければマイペース出勤のふくさんに会えるかも
夫が脳内出血で倒れたことで事業を継ぐことに
1948年創業、銀座の老舗洋食レストラン「日東コーナー」で働いているのが、昭和10年生まれ、91歳のミヨさん。初代は貿易業を営み、ミヨさんの夫である3代目社長が、貿易業で交流のあった人脈を生かし、歌舞伎座のお膝元で飲食店をオープン。
現在は移転し、4代目のミヨさん、5代目である息子の大作さんとともに店に立つ。看板料理は、トマトソースのロールキャベツだ。
「キャベツは産地や季節によって味やかたさ、香りが全然違うの。牛と豚の合いびき肉は、銀座の有名な精肉店から仕入れています。おいしいからとにかく一度食べてみて」
と、素材へのこだわりを語るミヨさん。8時間煮込んだふわふわ、とろとろのロールキャベツを求め、時には行列ができる。このロールキャベツは、ミヨさんの夫が作り上げたレシピを再現したもの。
「息子が2歳だったころ、主人が突然脳内出血で倒れて、闘病生活が始まりました。私が事業を継ぐことになったのですが、レシピがわからなくなってしまって……。主人が作った味を目当てに来てくださるお客様が多かったので、ロールキャベツだけはお休みすることにしたんです」(ミヨさん、以下同)
ミヨさんが4代目、後に大作さんが事業を継承。15年ほど前に、夫が長年懇意にしていた有名シェフの協力により、当時の味を再現。ミヨさんの舌を頼りに何度も試行錯誤を繰り返し、30年以上の時を経て、ロールキャベツをメニューに復活させたという。
ミヨさんは現在、不定期でランチタイムに出勤。来店客が席に座るとお水を出し、自然な距離感で接客する。
「お客様がコートをお脱ぎになって、ひと息ついたころにお水をお出しする。私はお見受けしてすぐに、遠くからいらした方だってわかるんです。この間は、ベルギーからいらした方がいて。私は英会話ができませんので、急いで携帯を持ってきて、検索した画面を見せて、チョコレートやワッフルのお話をしました。今は何でも携帯で調べられて、助かっています」
付け合わせの野菜を切ったり、ひき肉を混ぜたり、料理の仕込みもテキパキ手伝う。90代とはいえ、お店にとっては欠かせない戦力だ。
夫が倒れた'80年代、ミヨさんは40代半ば。男社会だった昭和の時代に、女性が経営者として生きていくには風当たりも強かった。
「主人は意識が戻らず、口も利けない。何の情報もない中で、経営を指南していた顧問の先生方を信用しきって相談しましたが、たくさん痛い目に遭いましたよ。入院費用のために銀座のビルは手放して、当時は1日17時間、がむしゃらに働きましたね」

















