「楽しいことが好きだから」希望を持ち続ける︱
さて、“母の味を残したい”と願う相手、お子さん2人について聞いてみよう。
「タカラはこだわりが強くて、頑固で自由。リンはしっかり者で、お友達や家族の中でみんなを仕切っています(笑)。2人とも私の性格を引き継いでいて、分身のような存在ですね。大きくなったときに、自分のルーツとして本がヒントになればいいなと思っています」
どんな人になってほしいかを尋ねると、「傲慢にならなければ、それで十分」と微笑む。
オーガニックや食の安全性について強く考えるようになったのも、子どものためという。
「20代まではコンビニ食やファストフードも食べていたんですが、子どものことを考えたときに、いいものを与えてあげたいと思って。小さいときに基礎をつくってあげれば、大人になってもそこまでブレないんじゃないかなと思うんです」
調味料を吟味し、ケチャップやマヨネーズ、ドレッシングも手作りしていたまさこさん。ところが本人は「めんどくさがりです」と笑う。とてもそうは思えないのだが!?
「完全に独学なので、けっこう端折ってるんですよ。下処理などの中で、省けるものは省く。めんどくさがりだから(笑)。でもこだわる部分は、とことん追究しますね」
まだ治療法が確立されていないALS。だが、わずかではあるが、進行が止まったり症状が軽くなった例=「ALSリバーサル」がある。“世界のどこかに回復した人がいる”という事実が、まさこさんの心に小さな明かりを灯した。「リバーサルに懸けて生きよう。私は希望を捨てない」という思いを胸に、今日を生きていく。
そして、その先に思い描いている夢もたくさんある。
「今回の本に入っていない料理もたくさんあるので、今度はレシピが中心の本を出せたらいいなと思っていて。あと、海が見えるキッチンで料理教室をやりたいです。以前やっていた陶芸や金継ぎも、またやりたいし。料理まわりのことにすごく興味があるんですよね。自分の作ったお皿で出せたら素敵だし、金継ぎはお気に入りの食器が割れてしまっても、継ぐことで新しい美が生まれるのがいいなと思うんです」
まさこさんにとって、食は屋台骨のような存在なのかもしれない。
以前、「どうしてそんなに頑張れるの?」と、まさこさんに尋ねたという田中さん。
「そのとき返ってきたのは“楽しいことが好きだから”。とても彼女らしい言葉だと思います。ただ、やはり無理だけはしないでほしい。どんな状態であっても、まさこさんは存在そのものが周りを明るく照らしています。どうかそのままのまさこさんでいてほしい」(田中さん)
その願いはきっと、まさこさんの周りの人のみならず、本を読んだ人たちもきっと同じだろう。“この本が、どこかで誰かの希望となりますように”本の最後に記されたこの一節が読者の心に希望の種を蒔き、今度はまさこさんにまた返ってくる─そんな希望の往復運動がずっと続いていくことを、願わずにいられない。
<取材・文/今井ひとみ>
写真提供:徳間書店


















