夫のADHD、宗派の違い、夫婦別姓を乗り越えて
こうして、僧侶としての一歩を踏み出すが、私生活では、夫・大治朗さんとの間に、難問が3つ横たわっていた。
まず、大治朗さんが抱えていたADHD(注意欠陥・多動性障害)である。
結婚後、トラブルに直面することで異変に気づいた。
例えば、夫婦共に世話になっている師匠が運転する車で長距離移動する間、大治朗さんはずっと寝ていたり、一門の重鎮に結婚の挨拶をしに行ったら、喫茶店で寝始めたり。
「最初は“恋愛フィルター”の影響で、悪い部分が見えなかったんですが、長く付き合うと見えてくるんですね。人の怒りに共感できないところもあるので、私が怒っていてもわかってくれないんです」
こういう夫を持つ妻は、自分を責めがちだ。
「“私がおかしいんじゃないか”“なんでこんな人を選んじゃったのか”と。それでうつになることがあって、“カサンドラ症候群”というんですが……私もなりました」
大治朗さんによると、当初は、こうした行いや態度をなんとか直してほしい一心で妻からかなり厳しく叱られたという。
「これだけ言って、なんでわからへん?と怒られる。言い返すと3倍怒られる、その繰り返しで、しんどかったです」(大治朗さん)
関係も険悪になってきた。そんなとき、大治朗さんの姉弟子がテレビで大治朗さんにそっくりな症状の人を見たので、専門医を受診してはどうかとすすめてくれ、発達障害という診断につながった。
大事な場面で突然寝てしまうのは、プレッシャーがかかると心身が耐えられなくなって、自動的に自分を守る“ナルコレプシー”という睡眠障害であることもわかった。
医師から、ナルコレプシーは発達障害の人が併発しやすいと教わった団姫さんは、対処方法を学んでいく。
例えば、大治朗さんが緊張しそうな場面では「失礼がないように」とプレッシャーをかけるのではなく、「偉い人だけど、すごく優しい人だ」と安心させる情報を伝えてみるなど、接し方を工夫したのだ。
「肝心なのは、夫に合った環境づくり。彼の特徴を頭に置いて、夫に合った状態でいられるようにと考えています」
団姫さんは、外を飛び回ることが多いので、料理や掃除、洗濯など家の仕事はもっぱら大治朗さんの役目。特に料理が上手なので、料理下手を自認する団姫さんは大助かりだ。また、2人には12歳になる息子がいるが、子育てもうまくやってくれる。仕事に専念する時間が持て、恵まれていると思うが、子どもが大治朗さんに懐きすぎることに寂しさを感じるときも……。
「低学年のころは親子3人で同じ部屋に寝ていたんですが、息子が夜中に『怖い夢見た、一緒に寝て』と言うとき、私ではなく、夫の布団に入ります。そういうとき子どもはほぼ無意識ですから(笑)」


















