大切な人に負担をかけない相続について考える

 生前整理の中でも、特に大切なのが「相続への備え」。 財産の整理は、単にお金や不動産を引き継ぐための準備ではない。残された家族が迷いや負担を抱えず、円満に未来へ進むための大切な取り組みだ。

 そのために、預貯金や保険、不動産、貴重品など、自分が築いてきた財産を一度整理してみよう。本人にしかわからない資産や契約が残っていると、家族が手続きを進める際に大きな負担となることがあるので注意して。

 財産の一覧を作る、重要な書類の保管場所を伝える、自分の希望を家族と話し合うなど、準備は心に余裕がある元気なうちから始めよう。

 相続について考えることは、家族への感謝や思いを伝えるきっかけにもなり、今後の安心につながるはず。

【STEP1】自分の財産を把握する

 自分の財産を把握し、相続財産が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えそうな場合は、早めの対策を。毎年110万円までの贈与が非課税となる暦年課税を利用した生前贈与や、条件を満たすことで贈与税がかからない方法を検討することも選択肢のひとつ。

【STEP2】相続税対策を検討する

 贈与税がかからない生前贈与のケースも知っておこう。「生活費の贈与」は、社会通念上「相当」とみなされる範囲内であれば非課税。「教育資金」は、入学金や授業料など、教育費の援助は1,500万円まで非課税※。

「配偶者への贈与」は、婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、1度だけ2,110万円(基礎控除を含む)まで非課税。「住宅取得の資金援助」は、最大1,000万円まで非課税。他にも対象となるものがあるので、相続専門の税理士などに相談してもいい。

※ 教育資金一括非課税制度は期限や、学校等以外への支払いは500万円までといった細則がある。

【STEP3】節税効果を考え生前贈与を検討する

 贈与税の課税方法には、年間110万円まで非課税で贈与できる「暦年課税」と相続時にまとめて精算する「相続時精算課税」がある。暦年課税の場合、相続開始前から7年以内(持ち戻し期間)に贈与者が亡くなると、贈与はなかったものとして相続税の課税対象となるため注意しよう。

これからの時代のマスト対策「デジタル情報の管理」

 80代でも7割がスマホを利用し、さまざまな手続きもデジタル化されている現代。

 実際に世の中では、保有者が亡くなった後、放置されているネットバンク口座や金融商品などのデジタル遺産が増えている。親の取引の事実を知っていたとしても、IDやパスワードを知らなければ、口座にアクセスができない。

 ほかにも有料のネットサービスやアプリなど、IDやパスワードが不明だと、相続や解約の手続きの際に残された家族が困ることになる。早めに家族で共有する方法を考えたい。いきなり、親にIDやパスワードを聞くのは気が引ける場合は、写真などのデジタルデータ整理から一緒に始めてみよう。自分自身も、人生を振り返る、よい機会になるかもしれない。

取材・文/満留礼子(羊カンパニー) デザイン/黒田志麻

一般社団法人生前整理普及協会代表理事 大津たまみさん、副代表理事 林茂行さん
家族のために、自分自身のために、生きることを前提に、物・心・情報を整理することで、幸せなエンディングを迎えるための生前整理を提案・相談を受けている。著書に『生前整理とお金・手続きのすべて』(Gakken)があるhttps://seizen.life/gaiyou.html