再犯防止に重要なのは
社会的な孤立を防ぐこと

 さらに“前科者”と言われることでさらに孤立が深まる。

「社会的な孤立をどう防ぐかも犯罪を繰り返させないための非常に重要なポイントです」

 だが、猟奇的な事件が起きるたび、厳罰化が訴えられる。

「考えられないような犯罪が起こることは社会にも問題があるかもしれないんです。特に凶悪犯罪では犯人にこれまでの人生でなんらかの人間関係の壊れがあったことは確かです。

 そして追い込まれていったときに身近に苦しみをわかってくれる人がいなかったり、孤立化したことが犯罪に手を染める一因となってしまいます。刑務所から出て、再び孤立化してしまえば負のスパイラルに陥ってしまいます」(加藤牧師)

 だが、いくら神や仏に仕えているとはいえ、同じ人間。映画『教誨師』の作中の佐伯牧師同様、葛藤も抱えている。

「罪を犯した人を支えることは裏切られることも多い。人間の罪深さはなかなか変えられない。ですが、それもわかったうえじゃないと受刑者とは関われない」(加藤牧師)

「彼らが特別ではない、私たちも同じです」(A住職)

 並大抵の精神力では務まらない。だが加害者たちはその真摯な姿を目の当たりにして己の過ちに気づかされていく。

 そして、ひとりでは生きられないことも。石塚教授は、

「私たちだって誰かの伴走者なんです。同僚、友人、家族、背負いきれない荷物を一緒に担いで走ってくれる人が周囲にいます。そして誰かの重荷を一緒に担ぐこともできます。そうやって支え合っているんです。実は誰もが誰かの『教誨師』なんです」

お話を聞いたのは
A住職◎40年以上にわたり、教誨活動を行う寺院の住職。匿名を条件に取材に応じてくれた
加藤幹夫牧師◎日本基督教団教誨師会会長。牧会の傍ら、刑務所において懲役受刑者らへの教誨活動を行う
石塚伸一教授◎龍谷大学法学部教授、犯罪学研究センター長。専門は刑事法学。刑事政策や犯罪学を研究