自宅にWi-Fiをつながない理由

 二人の愛の巣は住宅ローンなしの戸建て物件。所有者は萌美さんの父親ですが、両親は住んでおらず、萌美さんがひとりで暮らしていました。そこに夫が転がり込む形で同棲が始まり、今に至るそうです。

 この物件は今どき珍しくWi-Fiがつながっていないのですが、それには理由がありました。萌美さんがひとり暮らしを始めたころ、Wi-Fiをつないでいたのですが、胃痛や頭痛、めまいなどの症状や倦怠感・脱力感に悩まされ、心身ともに安定しない日々が続いたそう。「Wi-Fiのせいなんじゃないかって思うんです!」と萌美さんは振り返りますが、Wi-Fiの契約を解除したところ、瞬く間に症状が消えたので、萌美さんは確信したそうです。

 Wi-Fiなしの生活は夫と結婚しても変わりませんでした。もちろん、Wi-Fiがなければ、その分、携帯会社のデータ通信料が増え、割高なプランを利用せざるを得ません。そこで夫が「格安スマホに乗り換えたいから、Wi-Fiを引いてくれよ」と頼んでも、萌美さんは「私がどうなってもいいの!?」と突っぱねたそう。

 当時、使い放題のプランにいろいろなオプションをつけると、毎月の料金は12,000円。「確かに高いですね。旦那さんはそれで納得したんですか?」と尋ねると萌美さんは「お金より大事なことがありますよね?」と答えました。結婚から3年間、萌美さんだけでなく、夫も割高な料金に甘んじたのです。3年前に母親が亡くなり、遺産相続で6,000万円の現預金を手にした萌美さんにとっては、節約より健康のほうが大事なようです。

夫が39度の高熱を出しても薬を許可しない妻

 コロナショックにより夫婦の間で病気に対する意識の差が明らかになるケースがありますが、萌美さんの場合、コロナの前から夫の違いを感じていたそうです。

 例えば、萌美さんの口癖は「薬は身体に悪いんだから」ですが、あるとき夫が39度の熱を出したときのこと。意識が朦朧とし、息使いが荒く、立ち上がるのがやっとの夫は「病院に連れて行ってくれ」と頼んだそうですが、萌美さんは「休んでいれば治るよ」と聞き入れませんでした。「それなら薬を買ってきてくれよ」。夫はそう頼んだのですが、萌美さんは「薬を処方されそうだから病院に行かないのに、なんで買ってこなきゃいけないの!?」とあきれ顔。

 結局、夫は自然に治癒するのを待つしかなかったのですが、萌美さんがここまで薬を毛嫌いするには理由がありました。萌美さんは35歳のときに子宮内膜症が発覚し、黄体ホルモン剤による薬物療法を選択したそうです。治療は6か月にわたって続いたのですが、頭痛やほてり、そして嘔吐などの副作用に悩まされる日々。「つらくて死にそうでした」と振り返ります。当時の記憶がトラウマになり、今でも夢に出てくる夜があるそう。闘病の末、薬は病気だけでなく、身体も攻撃することがあることを知り、それ以降、あらゆる薬を飲むのをためらうようになったそう。

 筆者は「旦那さんは言うことを聞いてくれたんですか?」と尋ねると、萌美さんは首を横に振ります。夫はその日以来、頭痛薬や胃薬、解熱剤などをこっそりと購入し、隠し持ち、もしものときに飲んでいたのですが、萌美さんに隠し通せるわけがありません。「私の言うことを聞かないから、熱を出したりするのよ」と、夫のことを罰当たりだと断じます。