夫を追い詰める妻の心理

 度が過ぎるとそのうち文句を言うだけでは飽き足らず、怒鳴る、物を投げるなどの過激行為に発展するという。

「壁を叩いて威嚇したり、物を投げて威圧的な振る舞いは、当然“間接暴力”に当てはまります」

 もちろん相手にケガを負わせれば立派なDV案件だ。

 モラハラ妻の性格の特徴は我が強く外づらのよいタイプ。家では夫に威圧的な態度をとる反面、外では言い争うこともせず、素直な妻を演じる傾向にある。

 一方の被害に遭う夫に多いタイプは、まじめで気が優しい男性。ナイーブで争いを好まない性格がモラハラ妻の餌食になっているのだ。しかも怒り狂った妻に素直に謝っても、許してくれるどころか「その態度はなによ」となじられ、一晩中説教をされる夫もいるという。夫は鬼のような妻と向き合う気力がなくなり、帰宅恐怖症になるケースも。

「残業で遅くなる、と連絡して妻の就寝時間まで車の中で時間をつぶしたこともあります。妻にばれたら大変なので同僚に口裏を合わせてもらいました」とは前出のAさんだ。

家の中が針のむしろになってしまう夫も(※写真はイメージです)
家の中が針のむしろになってしまう夫も(※写真はイメージです)
【写真】元夫を「ブサイク」呼び、“モラハラ妻”ぶりを見せていた木下優樹菜

 結婚後、妻がここまで豹変してしまう理由は何なのだろう。そこには日々のストレスや家事や育児で積もった夫への不満が関係しているようだ。

「妻は夫に、自分と同じくらいの家事分担をしてもらいたいと思っているんです。昼間は私が家事と育児をしたから、夜はあなたもするべき、といった具合。夫は『自分は外で働いてきたのだから家の仕事は妻の役目』と思っているパターンも多く、ここがうまく配分できていないと妻の不満がたまり、『あなたは何もやらない、グズで使えない男』という評価につながります」

 しかも妻たちはたいてい、家族まで味方につける。

「思春期の娘と束になって悪口を言われるのがいちばんきつい」ともらすのは娘が2人いる40代の男性。新型コロナウイルステレワークが進むなか、家の中が針のむしろ──。このような仕打ちが続くと、夫が精神的な病を発症してもおかしくない。

たちの悪い“無意識モラハラ”

 モラハラの定義は「嫌だと感じるかどうか」。自分は無視したり暴言を吐いたりなんてしていないし、ましてや直接拳をふるうなんて……と思っているとしたら、要注意だ。

 舌打ちをする、ドアを力いっぱい閉めるなどといったことでも、もし夫がストレスと感じているようなら立派なモラハラになってしまう。夫が我慢しているだけで、実は妻の行為に怯えながら胃を痛めている可能性は大きい。