『MUNASAWAGI』はジャパニーズHIPHOPのメインストリーム

 ミニアルバムのタイトルでもあり、リード曲にもなっているのが『MUNASAWAGI』。

「ビートを聞かせてもらったその日に“これで書いてみなよ”と言われたので、スタジオから出てすぐ作りました。この曲は、僕が初めてレコーディングをした広島県尾道市にある屋根裏のスタジオで感じた胸騒ぎが今ここにつながっているという思いを込めているので、そこで出会った同士のSUB-Kを誘って完結させました。

 ちょっと古臭くて懐かしさがあり、ダンサブルな曲調が僕の中で王道だと思っているんですが、『MUNASAWAGI』のトラックにしたものはまったく曲調も違ってすごく現代チックというか、今のジャパニーズHIPHOPのメインストリームのサウンドを踏襲したような形だと思うんです。

 “僕がこんなの乗れるのか!怖い!”と思っていたのですが、曲を聞いてくれるファンの層が増えた感じがします。『No Drama』という曲のサウンドもそうなのですが、オートチューンを使って現代のサウンドに合わせると、新しい層が聞いてくれることを実感しているので、これからも新しいジャンルにくじけずにチャレンジしていこうと思っています」

 では、なぜこの曲をタイトルに?

「決め手は、やっぱりいい曲だったし、歌詞の中にすべて詰まっていると思ったからですね。もともと、酒に使うお金が無限だと思い込んでいた僕は、お酒に溺れてたくさん痛い目も見たし、そういうタイトルにしようと思っていたんです。

 1曲目の『intro -Million-』のサブタイトルはもろにお金ですし、『MUNASAWAGI』にも“アコムのご利用明細”というリリックがあったり、『Intelude -Rakuten-』には楽天カードからの請求の声を入れたりと、お金に関する内容を散りばめた結果、最後は『MUNASAWAGI』だったのかなと。これをいちばん聞いてほしいという思いがありました」 

『Magic Potion』から始まった制作だったが、いちばん最後に完成したのが意外にも『intro -Million-』だった。「ごりごりのラップを詰め込んで気持ち悪いリリックとかおふざけを(笑)」“SKRYUらしさ”全開のリリックが、随所に見られる。

「その“らしさ”を出すのに妥協は許されないと思って、とにかく力んでしまって……。1か月くらいだったと思うのですが、作る過程でいちばん悩んだかもしれないですね」

 リリースから約2か月。ライブで本作の曲を披露することも多いが、なかでも盛り上がる曲は『VIP』だそう。

「僕自身がいちばん好きな曲なのですが、僕らしい踊れるファンクで、みなさんが期待しているものを見せることができたと思います。トークボックスのサウンドを交えたファンクをいつかやってみたいと思っていたので、北海道にお住まいのLil‘jさんというトークボクサーをお招きしました。

 ライブでは、『VIP』が僕も気持ちいいしお客さんも揺れてくれてるなというのを感じます。歌詞は借金のこととかですけど(笑)。それで踊ってもらえると、書けてよかったと思いますね

 そんなファンキーな楽曲がある一方、最後を締めくくるのはややネガティブなリリックの『No Drama』。

「“適当に触れて俺を汚すな”とかすごく強い言葉があるんですけど、この1年、東京で僕が情けないけど弱ってしまった中で出た言葉で。あんなことは絶対に言っちゃだめだと思っているんですけど……。

 でも、あの曲は東京で心にまったく余裕がなくて、お金もなくて、お金をあるだけ全部使い切って、とか。仕事も、僕のためを思って誘ってくれる人が大半だと思うのですが、その中でイエスマンじゃダメだなとか、シビアな話が出てくるじゃないですか。本当はそんなことお客さんに届けたくなくて、そんな尖ってる僕なんて見せたくないけど、これがないと成り立たないなというくらい、リアルに近づく1曲になったなと。この作品に芯を入れてくれたと思います」