いくら納得していても後悔は残るもの

「介護は先手必勝。ざっくりとした知識で構わないので身につけ、選択肢を増やしておき、それを納得した上で選択することが重要」

 と旦木さんは話す。

「『親のため』『子どものため』と思って動くと、思ったとおりの効果が得られなかったときに腹が立つが、『自分のため』と納得した上で動いていれば腹が立つことも少ないはず。この“納得のプロセス”は、介護や子育てだけではなく、あらゆる場面で重要な考え方だと思います」

 ただし、十分に選択肢を考慮し、納得して進めたとしても、「後悔することを防ぐことはできない」と旦木さん。

「例えば、親の認知症が進み、一人暮らしができなくなったため、親を施設に入れたが、親を亡くしたあとも『自分の選択は正しかったのか』と悔やみ続けている人もいる」という。

 ダブルケアをうまく乗り越えた人たちには、次の共通点があるという。

・プロの手を借りている

・家族で協力し合えている

・子どもを優先する

・完璧を目指さない

・自分の時間を大切にする

「介護と仕事に追われて、子どもと向き合う時間を軽視してしまったために、不登校になってしまったケースもあります」

 可能なら、会社にかけ合って時短やパート勤務にしてもらうというのも一つの手だ。

「介護は終わりが見えず、特に始まったばかりのころは、半ばパニック状態になって仕事を辞めてしまう人が少なくありません。でも、仕事は辞めないで、続ける方法を考えてほしいと思います。

 介護休業を取る人はまだまだ少ないですが、声を上げなければ誰も気づいてくれません。特に介護は、特別な人だけに起こることではありません。“お互いさま”の気持ちで支え合おうとしなければ、会社や社会を変えることはできないと思います」