「一緒にゴロゴロ」がデート
二人は現在、高須院長が都内で過ごす週末を中心に時間を共にしている。この取材が行われた金曜日は、「このあとデートに出かける」らしい。クリニックにいた西原さんに同席をお願いしたところ快諾してもらった。西原さんは言う。
「万年手術室にいるみたいな人。科学の人だから最短、最速、最善を目指し、新しい技術を覚えて、新しいもので刷新していく。私なんかはすぐに諦めちゃうのに、絶対に諦めない。第2、第3の道を探す」
隣で聞いていた高須院長は、「ホントに僕と西原は真逆!」と笑う。西原さんが続ける。
「この人は、『ピンチはチャンス』とか恐ろしいこと言うじゃないですか。私からしたらピンチはピンチだよって」
「本当に、ピンチはチャンスなんだよ」
「撤退だよ、撤退」
二人の会話は、まるで夫婦漫才である。
「克弥は“国のために”って人だけど、私はアナーキーだし。全然、相いれない」
「僕は西原のことはクマだと思ってるの。クマが勝手にごはんを食べていたら怒る気にもならないでしょ。違う生き物だと思えば、腹も立たない(笑)」
だけど、二人は仲が良い。西原さんは、「私は管制塔にはなれない」と言い、「お互いただただ付き合っている彼女と彼氏というだけ」と話す。それで十分。人生は、そういう人がいるだけで楽しいだろう。
高須院長は、自分が死んだら西原さんに喪主を務めるように伝えている。だが、西原さんは断固として拒否すると言い、理由をこう語る。
「あまり先のことは考えたくない。“有限の恋”は、今日と明日のことだけ考えればいい。ここから先、そんなに人生って変わらない。変わらないんだから、一日でも多く楽しみたいじゃないですか。せっかく一緒にいるのに、メソメソしたらもったいない」
どんなデートをしているんですか? そう尋ねてみた。
「一緒にゴロゴロしてるだけ(笑)。具合が悪くなる前にマッサージに行こうかとか。彼氏、彼女の関係だけど、内面的にわかり合っているとかじゃないんですよ。わかり合おうとするとケンカになるでしょ。若いときに体験した男とのケンカなんて、もう二度としたくない。そんな元気も時間もないんだから」
酸いも甘いも嚙み分けてきたからこそ、「わかり合わなくていい」。老いや病気を克服する技術がどれだけ進歩しても、人間には医学ではどうにもならない瑕疵がある。それをわかり合おうとするな。ただ、一緒にいられればいいではないか。
「わかり合わなくったって一日は濃い」。そう言って高須院長も頷く。
「西原は、『先のことは考えない』とか言うけどさ、自分の誕生日が迫ると、『来月は誕生日だから、上海蟹を食べに行こう』とか言うんだよ。しかも、誕生日月間とか言って、ずっとうまいもの食わせろ~って言ってくるの(笑)。ちゃっかり考えてんだよ」
「私たちの関係は、“推しとオタク”みたいなもんだからそれでいいの(笑)」
手を握り合う姿は、老いらくの恋というには、あまりにみずみずしい。ちなみに、「西原にお金をあげるつもりはない」そうだ。
「遺産として、愛車とゴルフ場の会員権だけ渡すって遺言状に書いてるの。彼女は運転できないし、会員権も女性はお断りのゴルフ場。でも、西原ならきっと何かしてくれると思うんだ。それが楽しみで仕方ないんだよ」












