悩みの裏にある“甘え”に気づいてほしい
昭和、平成、令和と目まぐるしく移り変わる時代の中で、電話の向こうにある人々の苦悩を受け止め続けてきた。相談者は10代から80代までと幅広く、それぞれが人生の岐路に立つ人たちだ。
「核家族化が進んだことで、昔に比べて嫁姑問題の相談は減りました。一方で、ギャンブルやアルコール依存症、不登校といった相談は増えています。ただし、それはあくまで表面的なこと。昔も今も、悩みの本質そのものはまったく変わりません」
相談者は思い込みにとらわれていることが少なくない。それを解きほぐすのも、パーソナリティーの重要な役割だ。
「人はなぜ傷つくと思いますか? 事実そのものが人を傷つけるのではなく、事実に対する解釈が人を傷つけるんです。人間は過去の集積でできており、過去の事実を変えることはできません。
しかし、その解釈は変えることができる。相談者に対して、あなたはこう受け止めているようだけれど、僕はこう解釈します、と別の視点を示してあげるんです。ただし、こちらの解釈が正しいなどと押しつけるようなことはしません」
20年以上前、強烈な印象を残した相談がある。
「離婚を望む女性からの相談で、恋愛結婚でも見合い結婚でもないというんです。詳しく聞くと、実の姉の代わりに無理やり結婚させられた、と」
結婚式当日、「どうしても結婚したくない」と言い出した姉。母親は困り果て、妹である相談者に「あんたが代わりに結婚して」と土下座して頼み込んだ。心の準備もないまま、不本意に結婚。それ以来、長く苦しみ続けていたという。
「大変驚きましたし、結婚式当日に別の相手が現れて、それを受け入れる男性側にも問題がある。僕は離婚をすすめました。こうした家のしがらみや地域特有の事情、世間体といった理由で、苦境に置かれている人もいるのです」
一方で、自分の望む答えが得られないと怒り出す相談者もいる。「ラジオでこんなひどいことを言われた!」と、相談者がニッポン放送近くの丸の内警察署に駆け込み、騒動になったこともあった。
「自分は被害者だという言い分ですが、よく話を聞くと周囲の人のほうが被害者だと思えるケースも多い。それを指摘すると、猛烈に怒り出す人が一定数います。会話の途中で電話を切られたこともありますし、おまえは悪魔だ!と言われたこともあります」
加藤さんは、甘えが怒りへと転じるメカニズムを指摘する。
「悩みの裏に、甘えが隠れていることは珍しくありません。その甘えが受け入れられず、誰かに否定されると怒りや不機嫌に変わるんです。大切なのはまず、自分の中に甘えたい気持ちがあると気づくこと。そして、それを受け入れることです」
10年以上にわたり同番組のディレクターを務める宅野淳さんは、「番組のスタイルは、加藤さんの個性そのもの」と語る。
「悩みとは、心の奥底にある不満が形を変えて表れたもの、というのが加藤さんの考え。ですから番組では、表面的な悩みではなく、その奥にある不満に気づいてもらうことを大切にしています。相談者がどれだけ感情的になっても、失礼なことを言っても、加藤さんは決して声を荒らげない。時に私たちが申し訳なくなるほど、真摯に相談者と向き合っています」


















