「自分らしく生きること」とはどういうことか?
元大学教授で、現在は産業カウンセラーとして活動する渡部卓さんは、青春時代に『俺には俺の生き方がある』に強い影響を受けたうちのひとりだ。
同書は、他者の評価や世間の常識にとらわれず、自らの人生を切り開くための指針を示した、加藤さんの初めての著書として人気だ。東大合格を目指し、3浪を経験した若き日の葛藤や、自己実現へのもがきなど、青春時代の熱くほとばしる思いが綴られている。
渡部さんは、早稲田大学の助教授だった加藤さんに憧れ、1974年に同大へ進学した。
「一流大学から一流企業へ就職し、出世する人が勝ち組だという価値観が、今以上に強かった時代です。ところがこの本を読んで、それがいかにちっぽけなことかと、ガツンとやられた。自分らしく生きるとはどういうことかを、真剣に考えさせられました。私たち学生にとって、先生はまさに精神的な支柱のような存在でしたね」(渡部さん、以下同)
思い切って加藤さんに留学サークルの顧問就任を願い出ると、多忙にもかかわらず快諾してくれたという。
「学生にも分け隔てなく、いつも気さくに接してくださいました。講義は大変な人気でしたが、採点には厳格でした。アメリカをはじめ、世界の最先端の心理学に精通しながら、その知見を誰にでも理解できる平易な言葉に置き換えて伝えることができる。
だからこそ、学生たちはもちろん、多くの読者やラジオリスナーから共感を集めていらっしゃるのではないでしょうか」
大学卒業後、渡部さんは大手企業に就職し、順調にキャリアを重ねていった。しかし、加藤さんの
「本当に自分がやりたいことを追い求めなさい」
という言葉がずっと心に残っていた。このまま年齢を重ね、定年まで歩み続けることへの違和感はぬぐえないままだったという。
そんな折、部下との関わりの中で、仕事のプレッシャーでうつに陥り、燃え尽きてしまう社員が多数いる現実に直面する。
加藤さんに打ち明けると、職場のメンタルヘルスに対応できる専門家が不足していることを指摘された。
「その現状を知り、自分自身がこの問題に向き合い、人生の後半戦をかけてみたいと思うようになったんです。加藤先生は、力強く背中を押してくれました」
堅実なキャリアを捨て、45歳で退職。ベンチャーを創業し、産業カウンセラーの道へ進んだ。
「先生に出会わなければ、私はそのまま組織に安住していたでしょう。どう生きるべきか、その問いに向き合うきっかけを与えてくれた、人生の恩師です」


















