「書き続けること」で救われた青春時代
親子、夫婦、職場の人間関係、健康問題、金銭問題と、さまざまな不安を抱える現代人。加藤さんは“常に不安を抱えている人”の増加の原因は、幼少期の親子関係が深く関わっていると、著書の中でも繰り返し指摘している。
《もしもいつも心の底に不安感があって苦しんでいる人がいたら、「私は親の心の葛藤に巻き込まれたのではないか」という自己認識が有効です。「親は自分の心の葛藤に直面する勇気がなくて、子どもを巻き込むことで解決しようとした。その結果、私は神経症になった」と自己認識できるかできないかでその後の人生は変わります。
そして、「私は親のように他人を巻き込んで心の葛藤を解決することをしない」という決断をするのです》(『テレフォン人生相談―心の仮面をはずそう―』(発行・ニッポン放送)より)
加藤さんは、親から無条件の愛情を受けられずに育った子どもは、大人になってから慢性的な不満や怒りを抱えたり、精神的な自立を妨げたり、他者の評価に過敏になるなど、さまざまな生きづらさを背負うことになると繰り返し説いている。だが、加藤さん自身もまた、強権的な父親のもとで苦しみながら育った。
「父親は教員で、僕が試験でいい成績を取っても、そんなレベルで喜ぶな、と怒鳴るような父親でした。たびたび人格を否定され、母親も子どもには無関心。戦後の混乱期でしたが、経済的には恵まれていたため、周囲からは“良い家庭”に見えていたでしょう」
家庭に違和感を抱きながらも、子どもであるがゆえ、この環境から逃れることはできない。思春期の加藤さんにとって、「書くこと」が唯一の心のよりどころだった。
「中学生のころから、書くことが救いでした。精神を病まずに済んだのも、命を絶たずに済んだのも、書くという行為があったからです」
自己模索のただ中にあった青春時代、ありとあらゆる思いを書きつけた。家族、恋愛、受験といった身近な悩みから、世界の飢餓や戦争、そして、社会を知らない自分自身への苛立ちや嘆きまで─。自分の内面や疑問と向き合う行為は、その後社会学を志すきっかけへとつながる。そしてこれらの記録はのちに『高校生日記』(PHP研究所)として出版され、悩める若者たちに読み継がれていった。
多くの読者やラジオのリスナーと同様に、家族の問題を抱えて生きてきた加藤さん。人生相談で多くの人々の話を聞いてきたが、「僕自身は人に相談することはほとんどなかった」と振り返る。
「大きな壁にぶつかったとき、誰かに頼る代わりに、古典に頼ってきました。そして、とにかく書き続けることで自分の内面を整理してきたのです」


















