戸籍を男性のままにする理由
インタビューの冒頭から、家族の話になるたび、はるなさんは涙をこぼした。心が揺れた日々の中でも、いつも家族への深い愛があった。母と離婚した父へのわだかまりも、次第に解けていったと明かす。
「今はね、お父さんの子どももみんな私のきょうだいやし、お父さんも一生懸命生きてるんやと思ったら、許せないなんて思わなくなりました」
母親には毎日電話をする。泊まりに来るときも気遣いを欠かさない子、と母・初美さんは目を細める。
「壊れたドライヤーを見つければ、すぐ新しいものを送ってきたり、よく見てる(笑)。気を使いすぎずにゆっくり生きてほしいけど、性格だから直らないでしょうね」
その思いやりは友人・知人、仕事関係者にも向けられる。森三中・大島さんは語る。
「下積み時代にお世話になった構成作家さんを20年以上たった今もごはんに誘う。24時間マラソンのコーチとWBC観戦に行く。その義理堅さが愛さんらしいんですよね」
周囲の裏切りさえ受け止めてきた。結婚詐欺に遭ったことも、お金を持ち逃げされたこともある。
「信用してた人の裏切りなんて山ほどありました。でも全部、自分が踏み出した結果。学べるならムダじゃない。恋も同じで、失敗してもまた好きになる。何もない人生より、いろんな出会いがあったほうがいいと思ってるんです」
手術後も戸籍を男性のままにしている理由を尋ねると、少し無邪気に微笑んだ。
「大西賢治がいたから、今の私がいる。どちらも事実なんです。好きになった人が『籍入れよう』って言ってくれたら、そのときに考えればいいかなって。その相手が男性か女性かもわからない。それぐらい自由に生きたいんです」
そして、理想とする人生の最後をそっと明かす。
「大西賢治って本当は人見知りで根暗。でも“はるな愛”という着ぐるみを着ると人と話せるんですよ。こんなに濃い出会いがあるなら、またニューハーフとして生まれたい。最後は『賢治の人生、最高やったな』って笑って目を閉じれたらいいなと思ってます」
<取材・文/森きわこ>


















