脂肪が肝臓につくと血圧と血糖値が上昇

内臓脂肪の多い人が気をつけなくてはいけないのは、肝臓に中性脂肪が20%以上たまった状態の病気『脂肪肝』です。脂肪肝というと、脂っこい食事やアルコールが原因だと誤解されることがありますが、日本人の場合は多くが糖質のとりすぎなんですよ」

 肝臓はご飯やパン、果物などの糖質をとったときに、エネルギーとして使われずに余った分を中性脂肪などとして蓄える。

 この容量がオーバーすると、脂肪肝に。栗原先生によれば、脂肪肝は運動不足なども影響するが、特に甘いものが好きな中年女性に多いそうだ。

内臓の周辺に内臓脂肪(ピンク)がたっぷりとついているのがわかる。その周りを皮下脂肪(黄色)が取り囲んでいる(提供/栗原毅先生)
内臓の周辺に内臓脂肪(ピンク)がたっぷりとついているのがわかる。その周りを皮下脂肪(黄色)が取り囲んでいる(提供/栗原毅先生)
【写真】高血圧患者のCT画像 ピンク部分が内臓脂肪、黄色部分が皮下脂肪

「脂肪肝になると、男女共に血圧や血糖値が上がりやすくなります」

 なぜなら、血液中に中性脂肪があふれてしまうからだという。

「増えた中性脂肪が血管の内部を傷つけ、そこにコレステロールがこびりつくと、動脈が硬くなります。すると血流も悪くなり、血管に強い力をかけないと血液を流せないので、血圧が上がります」

 また、血糖コントロールも肝臓の重要な働きだ。血液中に余った糖を肝臓に貯蔵し、血糖値が上がらないようにする役割がある。

「しかし、脂肪肝になると、血糖値を下げるためにすい臓から分泌される『インスリン』というホルモンの効果が悪くなってしまうのです」

 食事で摂取したご飯やパンなどの糖質は、胃や腸で糖に分解されて血液の中に入り、インスリンの働きで全身に届けられてエネルギー源になる。この働きが衰えれば、高血糖になる。

健康診断の結果で脂肪肝の早期発見を

 しかし、脂肪肝になっても自覚症状が現れるわけではない。自分が脂肪肝かどうかを知るには、健康診断などで行う血液検査の肝機能値から判断する。チェックするのは、肝機能を表すALT、AST、γ―GTPの3つの数値だ。

 ALTとASTの一般的な基準値は10〜30IU/Lだが、栗原先生は長年の治療実績から、17IU/L以上になれば脂肪肝が疑われ、30IU/Lではほぼ脂肪肝になっているという。

「私が理想値として提唱するのは、ALTとASTは5〜16IU/Lで、γ―GTPは女性の場合は10〜30IU/Lです。一般的な基準値よりもかなり厳しい数値ですが、これを超えている人は、脂肪肝の可能性が高いので要注意です」

血液検査でわかる肝機能の数値をチェック!

 一般的な肝機能の基準値もあるが、血圧や血糖値を保ちたいなら栗原先生が推奨する「理想値」を目指そう。γ-GTPは女性の場合、30IU/L以下を目標に。

基準値
・ALT(GPT)10〜30IU/L
・AST(GOT)10〜30IU/L

 健康診断や医療機関の検査などで一般的に用いられる数値

理想値
・ALT(GPT)16IU/L以下
・AST(GOT)16IU/L以下

 栗原先生の長年の治療実績に基づいて導き出された数値