東京弁護士会会長就任時は不祥事など大きな問題を抱えていた時期で、女性トップとして対応に尽力している。

ジェンダー平等から取り残された亡国になってしまう

 2020年から2年間、日弁連事務総長を務め、令和6年度同7年度日弁連会長選挙への出馬を表明。日弁連は全国52ある弁護士会からなる組織で、会長は選挙により選出される。

「日弁連会長を目指す人は今まででも、最も会員数が多い東京弁護士会の会長経験者が多かったのです。私は日弁連事務総長の経験もありましたので、弁護士会の課題は把握していました。

 ただ先輩方の会長選をそれまで何回か応援していて、どれだけ大変かというのもよくわかっていました。選挙活動では全国を回りました。各地の弁護士会で意見交換会をしては、その合間に地元の法律事務所へご挨拶にお伺いして、支援を要請して。それが7か月ほど続いたでしょうか

 開票の結果、次点候補を大幅に上回る1万1111票を獲得。次期会長に選出された。女性が会長に就くのは、75年にわたる日弁連の歴史で初めてのこと。裁判官、検察官を含む法曹三者でも女性トップは初となる。

 女性初の会長として、とりわけ力を入れるのが男女共同参画だ。日本のジェンダーギャップ指数は146か国中118位で、日本女性の社会進出は大きく遅れている。

「ジェンダー平等、女性活躍の見地から、選択的夫婦別姓実現という環境整備が必要だと考えています。強制的に国が夫婦同姓を義務づけているのは世界でも日本だけ。

 女性の不都合を解消するという意味でも、選択的夫婦別姓を実現しなければ、日本はいつまでたってもジェンダー平等から取り残された亡国になってしまうのではと危惧しています」

 女性がトップに立ったいまなお、女性弁護士はまだまだ少数だ。法曹という男性社会でいくつもの「女性初」を成し遂げてきた彼女は、後進たちに期待を込めたメッセージを送る。

「私が弁護士になった時、女性の割合は約4%でした。あれから40年がたち、女性の割合は約20%になりました。ハーバード大学のある教授によると、20%というのはやはりマイノリティーだそうです。けれど女性が増えているのは事実。

 20%ということは、全弁護士のうち女性は9000人以上いるわけです。日弁連の副会長も、今15人中7人が女性です。私など目指さずとも、後輩たちは着実に増えている。自らやりたいと頑張ってくれている方々がいる。私自身そう期待しています

取材・文/小野寺悦子