舞台に立つとキンキンの姿が見える
現在も中目黒キンケロ・シアターでの舞台、テレビ番組、YouTubeと勢力的に活動しているうつみ。劇団キンキン塾生は7人で、週1回、うつみが歌唱指導などを行い、塾生と自主公演やコンサートを行っている。
「キンキンが亡くなった直後は劇場にいると思い出してつらくて、手放すことも考えました。でもここはキンキンのこだわりがつまった場所。だから公演を行って、この劇場を守っていくことは、つくってくれたキンキンへの恩返し。舞台に立つと、今もキンキンがいつもの席で座って観ている姿が見えます。うれしそうな顔をしてね」
中目黒キンケロ・シアターでは、うつみが主演する舞台“豆子シリーズ”も人気だ。「世の中が少しでも明るくなれば」という願いを込め、笑いあり、昭和の歌ありのコメディーで、ホロリとさせられる場面もある。“豆子シリーズ”ではセーラー服姿も披露し、今年も10月に公演予定だ。
「この私が17歳の設定です。スケバン役の東てる美さんと、正木慎也さんが演じる男子高校生を取り合ったりして、楽しいストーリーになっているので、ぜひ見に来てください」
1日2回公演のときは5時間立ちっぱなしだ。81歳という年齢を考えると驚異的な体力である。
「人間ドックの結果は毎回まったく問題なし。風邪もひかないから医者にも驚かれるんです。どこに行っても『どうしてそんなに元気なの?』って聞かれますが、元気は自分でつくるもの。嫌なこと、やりたくないことはしない。楽しいことだけをすればいいんです。朝起きたときも『今日も楽しいことが待っている!』と思い込んで起きるんですよ」
これまで大きな病気をすることもなく、あふれる才能で芸能界の荒波を軽やかに渡ってきたうつみ。
「確かに私はツイていたと思うし、亡くなった両親が守ってくれているのも感じます。でも運命は歩いてこないし、恐れずにいろんなことに挑戦したから今があるんじゃないかな。そして真っすぐ生きていれば、必ず誰かが見てくれていて、引き上げてくれるというのは本当です」
今年から始まったBS11のテレビ番組『ケロンパの ナカメへおいでよ!』では、うつみがゲストに愛川さんとともに過ごした中目黒を案内している。うつみは主題歌も歌っており、軽妙なトークが楽しい。
「黒柳徹子さんは91歳でしょ。私も90歳を過ぎても舞台に立てそうな気がする」
いくつになっても前向きなうつみが今日も周りを元気にしている。
<取材・文/垣内 栄>