酒、タバコ、甘い物といった嗜好(しこう)品はやめたくてもなかなかやめられないもの。嗜好品もまた認知症に関連する。
「缶ビールを1日に2本以上飲む人は、それより少ない人に比べて、認知症リスクが約22%高くなることが報告されています。また喫煙者は非喫煙者と比較して、認知症リスクが約30%増加することが報告されています。
いずれも大規模な研究によるものです。甘い物については糖尿病のリスクがあり、その糖尿病が認知症の大きな要因のひとつとされています」
過度な飲酒は避けること。同じアルコールのワインはポリフェノールを含み身体に良いとされているが、適量を超えれば意味なしという。
「タバコは禁煙に尽きます。認知症リスクを低減できる可能性があり、65歳未満の禁煙に顕著な効果が見られるため、早く決断すべきです。甘い物が招く糖尿病も発症年齢が若いほど将来の認知症リスクを増加させるので、早くから注意すべきですね」
認知症を完全に予防することはできない。認知症を疑う場面もやってくるだろう。その際には専門医のもとを訪ねるのが第一だ。
「認知症の代表的な症状である物忘れを指標のひとつとし、基本的には気になったら受診すればいい。もっといえば、私たちは単なる物忘れではなく、日常生活や仕事に支障が出るような物忘れを診断の目安としています。
認知症患者の多くは自覚症状がありません。ですから夫婦や家族など周囲の人間が異変を感じたら、病院に連れていくということも大切だと思います」
認知症予防には健康診断こそが大切
認知症の予防を目的とした自由診療の高額な検査が世に多数存在する。山田先生はそうした特別な検査は不要とし、職場や自治体で行われる一般的な健康診断を推奨する。なぜか。
「健康診断では体重や血圧の測定、コレステロール値や血糖値を調べる血液検査などが行われます。
こうした検査で見つかる高血圧、高LDLコレステロール、糖尿病、肥満といった健康問題は、認知症リスクと密接につながっています。健康診断で早期に問題を改善すれば、認知症リスクを下げられるわけです」
教えてくれたのは……山田悠史先生●マウントサイナイ医科大学(米ニューヨーク)老年医学・緩和医療科医師。米国老年医学・内科専門医、医学博士。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国各地の病院の総合診療科で勤務した後、2015年に渡米。現在は高齢者医療を専門に診療や研究に従事している。著書も『認知症になる人 ならない人』(講談社)など多数上梓。
取材・文/百瀬康司












