自殺願望を抱える青年を救った理解者

「本当はセーラー服が着たかったんです。学ランなんて嫌で、嫌で……」

 思春期の入り口は、試練の幕開けだった。小学生までは“少し不思議で可愛い子”として受け入れられていたが、中学に入ると、周囲の目は途端に冷たくなる。松田聖子の歌まねでテレビ出演していたことへの妬みも重なり、「女のカッコして気持ち悪い」と心ない言葉を浴びせられた。

 休み時間には追いかけ回され、倒され、蹴られる。体育館裏で石灰を口いっぱいに詰め込まれたこともあった。

「本当の自分を隠すのもつらいし、いじめられるのはもっとつらい。生きる意味なんてあるのかなって、毎日そんなことばかり考えてました」

 担任に相談しても返ってきたのは、「いじめられるのには理由があるんじゃない?」というひと言だけ。

「当時はクラスの人数も多くて先生も大変やったと思いますよ。でもね、その理由が言えないんですよ。変わってると思われるのが怖くて」

 誰にも理解されず、何度も消えてしまいたいと願った。

高校生になると、男らしく振る舞おうと努力した時期も
高校生になると、男らしく振る舞おうと努力した時期も

「気づけばいつも歩道橋の上にいました。でも家族が悲しむ、迷惑をかけるのは絶対嫌やと思うと飛び降りられなくて、また帰る。その繰り返しでした。団地の壁に頭を打ちつけ続けると、口の中に血の味がにじんできて。このまま死ねないかな……って考えたりね」

 そんな暗闇の中で救いとなったのが“新しい居場所”だ。中学2年の冬、母の営むスナックの常連客に連れて行かれたニューハーフの店「冗談酒場」。扉を開けると、照明がきらめき、華やかな衣装の人たちが踊っていた。

「ここでは、みんな自分らしく笑っている」

 胸を射抜かれた。ママのアキさんから「女の子みたいやね。ここでやってみる?」と声をかけられ、はるなさんは初めて自分が肯定されたと感じた。

 家族には「歌の仕事をもらった」と偽り、学校帰りに店へ通うように。4分間のソロステージを任され、フリフリのドレスでアイドルのものまねを披露した。

「ありのままの私がスポットライトを浴びて歌うと、お客さんが拍手をくれる。ずっと求めていた居場所でした」

 小さな自信が、学校での立ち居振る舞いも変えたのか、いじめもぴたりとやんだ。

「いじめっ子も、いじめてもしょうがないと思ったんじゃないですか。自分より弱くて迷っている存在を探していただけでね」

 だが、店で客にちやほやされて浮かれていると、アキさんは厳しく釘を刺した。

「ボケたらあかんよ。あんたは女やないからね。女だと思ったら苦しいよ」

 その言葉は愛情ゆえのものだったが、当時のはるなさんには受け止めきれず、「自分は周囲とは違う」と思い込んでいたという。

 ただ一つ恐れていたのは、両親にバレること。

「居場所を守りたくて、学校には休まず通いました。弟は私の変化に気づきながらも、親には黙っててくれたんです。めっちゃケンカもしたけど、いつも味方でいてくれる唯一無二の存在でしたね」