目次
Page 1
ー 『テレフォン人生相談』で出演を続ける社会心理学者の加藤諦三
Page 2
ー “混沌の時代”若者たちのカリスマ的存在に
Page 3
ー 「下世話な人生相談」と一緒くたにされて─
Page 4
ー 悩みの裏にある“甘え”に気づいてほしい
Page 5
ー 「書き続けること」で救われた青春時代
Page 6
ー 「自分らしく生きること」とはどういうことか?
Page 7
ー 舞い込む悩み相談の“答え”を著書に託して
Page 8
ー 時代が変わっても色あせない“メッセージ”

 

「こんにちは、加藤諦三です。変えられることは変える努力をしましょう。変えられないことはそのまま受け入れましょう。起きてしまったことを嘆いているよりも、これからできることを、みんなで一緒に考えましょう」

『テレフォン人生相談』で出演を続ける社会心理学者の加藤諦三

『人間であることの原点』、『燃える思想』など、数多くの著書を上梓した30代
『人間であることの原点』、『燃える思想』など、数多くの著書を上梓した30代

 家事の合間にリビングやキッチンのラジオから、あるいは運転中のカーラジオから─。このフレーズを耳にしたことがある人は少なくないだろう。

 北海道から沖縄まで全国23局ネットで放送されている『テレフォン人生相談』。今年で放送62年目を迎えるニッポン放送の最長寿番組で、高い聴取率を維持し続けている。現在、日替わりで番組進行を務める5人のパーソナリティーの中で、社会心理学者の加藤諦三さんは最も長く出演を続けている。実に半世紀以上にわたり、現代人の生きづらさや不安、苦悩に寄り添う言葉を届けてきた。

「時代とともに表面的な悩みの内容は少しずつ変化してきましたが、根元の部分はほとんど変わりません。親子関係の問題は約3000年前のギリシャ神話の時代から、相続問題は約2000年以上前の旧約聖書にも見られますから」

 やわらかな笑顔でそう語る。電話の向こうの相談者と向き合う際に心がけているのは、相談者自身に“悩みの本質”に気づいてもらうことだ。

「例えば、子どものことで悩んでいます、姑のことで悩んでいます、と言っていたとしても、その根底に自分自身の問題や夫婦関係の問題が潜んでいることがある。その人が抱える本当の悩みを会話の中で見つけていくことが、この番組の醍醐味です。相談者の言葉にそのまま答えるだけでは、これほど長く続く番組にはならなかったでしょうね」(加藤さん、以下同)

 ネットが普及した現在も、番組のスタイルは放送開始当初からほとんど変わっていない。週に2回の相談受付日に専用電話を開放し、かかってきた電話はいったん、約10人の専属スタッフが受け付ける。スタッフの中には、50年近くにわたり、リスナーの相談に耳を傾けてきたベテランもいる。

 加藤さんをはじめとするパーソナリティーと回答者はスタジオで待機しているが、相談内容や相談者の情報は事前に一切知らされない。収録開始と同時にスタジオへ電話がつながり、その瞬間に初めて相談者と向き合う。いわば、ぶっつけ本番だ。

「事前に情報があると、どうしても先入観が生まれてしまう可能性があります。私たちと相談者は同じ条件で、あくまで対等でなければならない。そのため、この原則は守り続けているんです」

 相談部分の放送時間は約14分だが、実際の収録時間はそれ以上。あまりに自然なやりとりのため、リスナーの多くはこれが編集されたものだとはとても信じられないかもしれない。

「相談は1時間以上になることも珍しくありません。相談者に気持ちよく納得してもらうことが目的ではなく、本当の意味での気づきを得てもらいたい。だからこそ、こちらも真剣です。収録を終えた後は、心身共に消耗しきっていますね」